流動性が薄い通貨ペアを取引するリスクとは?値動きが極端になりやすい理由

FX取引を始めたばかりの方が、マイナーな通貨ペアで大きな損失を出してしまうケースが後を絶ちません。実は、通貨ペアには「流動性」という重要な特徴があり、これを理解せずに取引すると思わぬリスクに遭遇してしまいます。

流動性が薄い通貨ペアとは、取引参加者が少なく売買が成立しにくい通貨の組み合わせのことです。USD/JPYやEUR/USDといったメジャー通貨ペアとは異なり、予想外の値動きやコスト増加が発生しやすいのが特徴です。

この記事では、流動性の薄い通貨ペアが抱える具体的なリスクと、値動きが極端になってしまう理由を詳しく解説します。初心者の方でも安全に取引できるよう、実践的な対策もお伝えしていきます。

目次

流動性が薄い通貨ペアとは?メジャー通貨との根本的な違い

流動性とは、簡単に言えば「その通貨がどれだけ活発に売買されているか」を表す指標です。流動性が高い通貨ほど、いつでもスムーズに売買できます。

メジャー通貨ペアは世界中の投資家や企業が日常的に取引しているため、常に多くの買い手と売り手が存在します。たとえば、USD/JPYは日本とアメリカの貿易取引や投資で頻繁に使われるため、24時間安定した流動性を保っています。

一方、流動性が薄い通貨ペアは取引参加者が限られています。南アフリカランド(ZAR)やトルコリラ(TRY)などの新興国通貨は、経済規模や取引量の関係で流動性が低くなりがちです。

通貨ペアの分類代表例1日の取引量流動性の特徴
メジャー通貨ペアUSD/JPY、EUR/USD非常に大安定した流動性
マイナー通貨ペアAUD/NZD、GBP/CHF中程度時間帯により変動
エキゾチック通貨ペアUSD/ZAR、EUR/TRY流動性が不安定

流動性の違いは、取引の際のコストや約定のしやすさに直接影響します。メジャー通貨ペアでは1銭程度のスプレッドで取引できるところが、エキゾチック通貨ペアでは10銭以上になることも珍しくありません。

流動性が薄い通貨ペアで取引するリスクが高まる4つの理由

1. スプレッドの大幅な拡大による取引コスト増加

スプレッドとは、買値と売値の差額のことで、FX取引における実質的な手数料です。流動性が薄い通貨ペアでは、このスプレッドが大幅に拡大してしまいます。

メジャー通貨ペアのスプレッドが0.2銭程度であるのに対し、新興国通貨では平常時でも5~10銭、市場が不安定な時には50銭を超えることもあります。これは、取引を始める前から大きなハンデを背負っているのと同じです。

さらに厄介なのは、スプレッドが時間帯や市場環境によって大きく変動することです。特に日本時間の早朝や重要な経済指標発表時には、普段の数倍に膨らむことがあります。

2. スリッページの頻発で想定価格での約定困難

スリッページとは、注文した価格と実際に約定した価格の差のことです。流動性が薄い通貨ペアでは、このスリッページが頻繁に発生します。

たとえば、110.00円で買い注文を出したつもりが、実際には110.05円で約定してしまうケースです。わずか5銭の差に見えますが、取引量が大きければ無視できない損失になります。

特に成行注文では、市場に十分な取引相手がいないため、想定よりも不利な価格で約定する可能性が高くなります。これは売り注文でも同様で、期待した価格よりも安く売られてしまうリスクがあります。

3. 価格操作や急激な値動きへの脆弱性

流動性が薄い市場では、比較的小さな取引でも価格に大きな影響を与えてしまいます。大口の投資家が売買を行うだけで、相場が一気に数十銭動くことも珍しくありません。

実際に、新興国通貨では政府や中央銀行による市場介入が頻繁に行われます。トルコリラなどでは、政策発表や政治的な発言だけで1日に5%以上の変動が起こることもあります。

この急激な値動きは、ストップロス注文すら機能させない場合があります。損失を限定するつもりで設定した注文が、大幅にすべり込んで想定以上の損失を被るリスクがあるのです。

4. 取引時間帯による流動性格差の拡大

メジャー通貨ペアは世界各地で取引されているため、24時間ある程度安定した流動性を保っています。しかし、マイナー通貨や新興国通貨は、その国の取引時間に流動性が集中する傾向があります。

たとえば、南アフリカランドは日本時間の夕方から夜にかけて流動性が高まりますが、早朝や昼間は取引が細ってしまいます。この時間帯に取引すると、通常よりもはるかに不利な条件での売買を強いられる可能性があります。

週末や祝日前後は特に注意が必要です。多くの機関投資家が取引を控えるため、個人投資家の少額取引でも価格に影響を与えてしまう場合があります。

時間帯主要通貨ペアマイナー通貨ペアエキゾチック通貨ペア
東京時間安定やや薄い非常に薄い
ロンドン時間最高良好普通
ニューヨーク時間最高良好やや薄い
早朝時間普通薄い極薄

値動きが極端になりやすい通貨ペアの特徴

エキゾチック通貨ペアの代表例とリスク度合い

エキゾチック通貨ペアとは、主要通貨と新興国通貨の組み合わせのことです。これらの通貨は経済規模や取引量の関係で、特に値動きが極端になりやすい特徴があります。

代表的なエキゾチック通貨ペアには、USD/ZAR(米ドル/南アフリカランド)、EUR/TRY(ユーロ/トルコリラ)、USD/MXN(米ドル/メキシコペソ)などがあります。これらの通貨は高金利で注目を集めることもありますが、その分リスクも大きくなります。

特にトルコリラは政治的な不安定さから、2018年には1日で20%近く下落するという異常事態が発生しました。このような急落は、レバレッジをかけた取引では致命的な損失につながります。

新興国通貨が抱える構造的な不安定要因

新興国通貨が不安定になりやすいのには、構造的な理由があります。まず、経済規模が先進国と比べて小さいため、外部からの資金流入や流出の影響を受けやすいのが特徴です。

多くの新興国は原油や貴金属などの商品輸出に依存しているため、商品価格の変動が直接通貨価値に影響します。原油価格が下落すると、産油国の通貨も連動して下落する傾向があります。

また、新興国の多くは外貨建て債務を抱えているため、自国通貨が下落すると債務負担が増加します。これがさらなる通貨安を招く悪循環に陥りやすいのです。

政治・経済情勢の変化に対する敏感度の高さ

新興国通貨は政治的な変化に非常に敏感に反応します。選挙結果や政権交代、政策変更の発表だけで大幅な価格変動が起こることがあります。

たとえば、ブラジルレアルは大統領選挙の結果次第で10%以上変動することがあります。市場が予想していた候補者と異なる結果が出ると、投資家心理が一気に変化してしまうためです。

中央銀行の金融政策も大きな影響を与えます。特に利上げや利下げの発表は、その国の通貨に直接的な影響を与えるため、発表前後は極めて大きな値動きが予想されます。

経済指標発表時に流動性が薄い通貨で起こる現象

重要指標発表前後のスプレッド変動パターン

経済指標の発表時間が近づくと、多くのトレーダーが様子見の姿勢を取ります。この結果、市場の流動性が一時的に枯渇し、スプレッドが急激に拡大します。

特にGDPや雇用統計などの重要指標では、発表30分前からスプレッドが拡大し始め、発表直後に最大となることが多いパターンです。流動性の薄い通貨ペアでは、この拡大幅が通常の5~10倍になることもあります。

発表後も注意が必要です。予想と大きく異なる結果が出た場合、市場参加者が一斉に同じ方向に動くため、一方向への急激な値動きが発生しやすくなります。

フラッシュクラッシュが発生しやすい時間帯

フラッシュクラッシュとは、短時間で異常な価格変動が起こる現象です。流動性の薄い通貨ペアでは、このフラッシュクラッシュが発生しやすい傾向があります。

最も危険なのは、主要市場が休場している時間帯です。日本時間の早朝6時から8時頃は、ロンドン市場もニューヨーク市場も閉まっているため、極めて流動性が低くなります。

この時間帯に大口の注文が入ると、売買を受ける相手が少ないため、価格が異常に動いてしまいます。2019年1月3日には、USD/JPYが数分間で4円以上動くフラッシュクラッシュが発生しました。

週末や祝日前後の流動性枯渇リスク

週末前の金曜日夕方から月曜日早朝にかけては、多くの機関投資家が取引を控えるため流動性が著しく低下します。この時期の取引は特にリスクが高くなります。

祝日も同様の現象が起こります。特にクリスマスや年末年始などの長期休暇期間は、通常の数分の一まで取引量が減少することがあります。

この期間中に突発的なニュースが出ると、対応できる市場参加者が限られるため、異常な価格変動が発生する可能性が高まります。ポジションを持ち越す際は十分な注意が必要です。

流動性の薄い通貨ペアを安全に取引するための対策

適切なポジションサイズの設定方法

流動性の薄い通貨ペアでは、通常よりも小さなポジションサイズで取引することが重要です。一般的には、メジャー通貨ペアの半分以下のサイズから始めることをお勧めします。

ポジションサイズを決める際は、想定損失額を資金の1~2%以下に抑える計算をしてください。たとえば100万円の資金がある場合、1回の取引での損失を1~2万円以下に設定します。

レバレッジも控えめに設定する必要があります。マイナー通貨では5倍以下、エキゾチック通貨では3倍以下に抑えることで、急激な値動きにも対応できるようになります。

効果的な損切りラインの決め方

流動性の薄い通貨ペアでは、損切りラインを通常よりも広めに設定する必要があります。スプレッドの拡大やスリッページを考慮して、テクニカル分析で算出した損切りラインよりも10~20%程度余裕を持たせることが大切です。

逆指値注文を使用する際は、成行注文ではなく指値注文を併用することをお勧めします。これにより、想定以上に不利な価格での約定を避けることができます。

また、重要な経済指標発表前にはポジションを一旦クローズすることも検討してください。予想外の結果による急激な値動きで、損切りラインが機能しないリスクを回避できます。

取引時間帯の選択と市場参加者の動向把握

流動性の薄い通貨ペアを取引する際は、時間帯の選択が特に重要になります。その通貨の主要市場が開いている時間帯を狙って取引することで、より安定した条件で売買できます。

たとえば、オーストラリアドルは日本時間の8時から17時頃、南アフリカランドは16時から24時頃が最も流動性が高くなります。この時間帯以外での取引は可能な限り避けるべきです。

市場参加者の動向も常にチェックしておきましょう。機関投資家の休暇期間や重要な会議の開催時期などは、事前に把握して取引計画に反映させることが大切です。

通貨最適取引時間(日本時間)注意すべき時間帯主な注意点
AUD8:00-17:00早朝・深夜豪州市場開場中が最適
ZAR16:00-24:00早朝・午前中南アフリカ市場に連動
TRY15:00-22:00深夜・早朝欧州時間が中心

まとめ

流動性が薄い通貨ペアの取引では、スプレッドの拡大、スリッページ、急激な値動きなど様々なリスクが存在します。これらのリスクを理解せずに取引を行うと、予想以上の損失を被る可能性があります。

しかし、適切な知識と対策を身につければ、これらの通貨ペアでも安全に取引することは可能です。ポジションサイズを小さく設定し、損切りラインに余裕を持たせ、流動性の高い時間帯を選んで取引することで、リスクを大幅に軽減できます。

FX取引では「知らないことが最大のリスク」です。特に流動性の薄い通貨ペアに挑戦する前に、その特性を十分に理解し、デモ取引で経験を積むことをお勧めします。安全な取引を心がけ、長期的な視点で投資を続けることが成功への近道となるでしょう。

本サイトの情報は、一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨するものではありません。FX取引には元本を超える損失が発生するリスクがあります。必ずリスクを理解したうえで、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。なお、FX取引に関する詳細な制度や注意点は以下のリンクを参考にしてください。

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